人を好きになるということ

僕が好きになった男の人のことを書きます

タクヤ

僕が「目覚める」前の話をしよう。


高校生のときの話だ。僕の性的な指向は、精通したときからずっと男性だったけれど、その頃の僕は恋愛を無意識に避けていた。同級生の男子を好きになってしまうのが怖くて、学校で「普通」に学校で過ごす以上の友達を作ろうとはしなかった。いや、できなかった。でも、その裏では同級生の裸を想像してオナニーをするのだ。


僕の高校は男子校だ。友達と呼べるかわからないけど、一人の同級生の話をしたい。クラスで一番長い髪をしていて、長髪の頃のキムタクと髪型がそっくりだったから、ここではタクヤと呼ぶことにする。体の線は細くて切れ長の目をしている。僕はタクヤのことを思い出すと今でも胸が苦しくなる。高校時代の夢を見るときは決まってタクヤが現れる。夢でタクヤは後ろから僕に抱きついてくる。


僕はタクヤに自分の殻を割られるのが怖かった。


高校に入学してすぐ僕はタクヤの裸の上半身をみた。ツルツルの脇に目が奪われる。その夜タクヤの華奢な裸を思い出して胸がいっぱいになるのに気づく。


タクヤは僕のことを「さん」づけと呼んだ。友達から「さん」づけで呼ばれたのは初めだ。タクヤは僕より大人だった。いつも本を読んでいた。


タクヤはそうするのが当たり前のように僕によく抱きついてくる。僕は彼のいい匂いに赤くなる。「好き」と言われる。


タクヤは夏休みの終わりに、宿題を手伝ってと僕を呼び出す。学校の近くのマックでチキンタツタを食べコーラを飲み宿題をやる。タクヤの半袖から脇がのぞく。駄目だ、見ちゃ。意識してるのがバレる。


タクヤは…。


僕はタクヤに自分の殻を割られるのが怖かった。僕にもう少し勇気があったら高校生活は全く違っただろう。それに、僕はきっとタクヤをたくさん傷つけてしまった。後ろから抱きつかれてビクっとしたのもそうかもしれない。もっともっとひどいこともある。高2のときだ。タクヤ三島由紀夫の「仮面の告白」を読んでいた。僕はとっさに「それ、ホモ小説だよね」と言ってしまう。最低なやつだ。とは言え、実際、それは同級生の夥しい脇毛に欲情するという小説だと僕は知っていた。でも、どっちにしても、僕は彼を傷つけたに違いない。タクヤが同性愛者かどうかと関係なく(それは今でもわからない)。ずっとあやまりたくてあやまれなかった。ごめん。

 

僕は本当はタクヤともっと仲良くなりたかった。だから僕は今でもタクヤの夢を見るのだ。